侵襲的な心血管治療を受ける率の、社会経済階層、保険種別との関連
                             American J of Public Health, Vol.88, No.7, pp.1089-92[1998July]
                     98年9月28日
【データ】91年1月1日から93年12月31日の間にカリフォルニア州内の病院を退院した30
〜89歳の人で主傷病が、急性心筋梗塞、不安定狭心症、狭心症又は慢性心筋虚血であるも
のが対象(重複を避けるため、他の病院から転送された患者や他の病院への転院患者は除
外す。インディアンやエスキモー等の少数民族や、人口の7%にあたる僻地居住者も除外
)。社会経済階層は記載さた郵便番号より、90年の国勢調査による各郵便番号地域の中央
所得で区分した(ecological study)
【分析対象変数】退院記録より、最初に記載された25の診療行為の中から以下に該当する
ものを目的変数とした。
 冠動脈造影、冠動脈バイパス手術、冠動脈血管形成術
独立変数は、
 人種(黒人、アジア人、白人、ヒスパニック)
 年齢(5段階に区分)
 性
 主傷病
 副傷病の数
 入院形態(選択的、緊急、救急)
 提供された診療行為の数(一日当たり20未満、20〜100 、101 〜200 、200 以上)
 保険種別(民間医療保険、無保険、HMO、メディケア、メディケイド)
社会経済階層は
 郵便番号地域別に、上位25%、中位50%、下位25%とし、中位に対する上位下位の比を
調べた。保険の種別に3×5=15グループに分けた。
【結果】206,233 人の患者に対して、91,384の冠動脈造影、34,067の冠動脈バイパス手術
、49,993の冠動脈血管形成術が施行されていた。
 51%がメディケア加入者であり、社会階層は均等分布。社会経済階層は保険種別毎に異
なっているが、HMOと民間医療保険加入者はほぼ同じ。社会経済階層の高い地域の人は
侵襲的な治療を受ける率が高く、その傾向は5つの保険種別を通じて一貫していた。
 交絡因子を補正すると、メディケアの加入者の受療率の差が社会経済階層の影響を最も
強く受けることがわかった。民間医療保険加入者は社会経済階層の影響を最も受けにくい
。HMO加入者については、バイパス手術よりもCAGや血管形成術の率の方が社会経済
階層の影響を強く受ける。
【考察】ある患者が侵襲的な治療を受けるか否かは、医学的な要因だけでなく、社会経済
因子の影響を受けることがますます示唆された。
 裕福な人は侵襲的治療を受ける確率が高く、またその影響は保険の種類によって異なる
。民間医療保険加入者で社会経済因子との関連が薄いことは意外。民間医療保険は一般に
自己負担が重く、高額な医療には慎重になるはずだが・・・。今回の調査は地域相関研究
なので、貧困地域の住民でも民間医療保険加入者はあまり自己負担に関心を寄せなくてす
む人が選択されているのかもしれない。また社会経済因子がメディケア加入者で最も強く
影響するのも意外。メディケアにも自己負担があり、貧困層のこうした医療のうけやすさ
を制限しているのかも・・・。無保険者では社会経済因子の影響も弱かったが標本サイズ
の小ささのためだろう。また治療の種類によって社会経済因子の影響の度が異なることも
意外。バイパス手術は高額なので、それだけ影響も強そうだが、そうではなかった。それ
だけバイパス手術は医療費のことなど気にしていられないほど明確なのかもしれない。
【限界】地域の中央世帯所得をその集団の社会経済因子としたこと。傷病名数を重症度の
指標としたが必ずしもそれは正しくない。一番重要な冠動脈の狭窄度などは退院記録から
は得られない。