肝がんの手術実施数と手術成績との関係 Archives of Surgery99年1月号 2000年1月24日岡本担当 【背景】熟練を要する治療技術は、実施数の多い施設ほど成績が良いことが、心臓移植、 バイパス手術、冠動脈形成術等で証明されており、近年保険者は、それぞれの治療技術の センター的機関とのみ契約するようになった。またその方が経済的にも効率的(入院日数 が短いから)でもある。そこで肝がんの手術についても調査した。 【データ】カリフォルニア州政府医療計画室の州内全病院の退院抄録。90年1月1日〜94 年12月31日の5年間に肝がんで肝切除術を受けた患者(ICD-9-CM code 155.0)を抽出。病 院は州政府刊行の病院活動報告で層別化。 【目的変数】在院中の死亡率、在院日数。 【分析法】ロジスティック重回帰分析。 説明変数:病院の手術件数、患者の性・年齢(年齢は45歳未満を基準に、45〜60、60〜 75、75〜でダミー変数化)、手術実施年、紹介元、切除術式(肝葉切除または部分切除) 、慢性肝疾患(肝硬変など)の有無、その他合併症の有無(複数の疾病間のcolinearitie s を最小限にするため「有る無し」にした) 。 これらの説明変数で補正し、実施件数で階層化した病院間の手術死亡率と在院日数(補 正法は文献を引用)を比較。 【結果】5年間に延べ138 病院で507 人が手術を受けた。(部分切除299 例、葉切除208 例)。5年間の手術実施数で病院を4つに階層化すると概ね患者が4分割された。 約40%に肝硬変あり死亡率27.1%(肝疾患無は7.3 %)。その他合併症が増えるごとに 死亡率は高くなる。 病院毎の手術件数と死亡率をプロットするときれいな逆相関(ロジスティック回帰分析 でp<0.01) 。同様の傾向は在院日数についてもあてはまる。死亡者の在院日数は助かった 者より長い(18.4日+2.24日vs12日+0.42日)。 良性肝疾患の手術も含め、2004人で分析しても同様(件数の多い病院の死亡率4.1 %、 少ない病院9.3 %、平均は6.9 %)。 【コメンタリー】肝がんの切除術は、移植手術と違って施設指定制ではなく、どの病院で も行える。しかし、肝がん手術の頻度は少なく、全ての病院の外科医が十分な例数をつむ ことは難しい。またこの手術は緊急手術はきわめて少ない(救急受診は10%位)。 救命率の向上のためにも、また医療費の効率化のためにも、肝がん手術にも施設指定制 (regionalization) を導入してはどうか?